体験談 航空自衛隊パイロット試験体験記

素人が操縦!ついにフライト!【航空自衛隊一般幹部候補生三次試験】合格体験記

2022年5月22日

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航空自衛隊一般幹部候補生飛行要員の三次試験で飛行機を操縦し、合格し、採用辞退するまでの体験記を書いています。

前回は採用試験中の基地内での生活を書きました。

ついに快晴の日を迎え、4回にわたるフライト中で一番印象的だった最初のフライトの体験記を作っていきます。

航空学生の採用試験でも同じ試験をするので、参考になるかもしれません。

誓約上、公開可能な写真のみ貼ってあります。機内の写真は公開していません。

練習機T-7に乗る

試験官とブリーフィング

出典 航空自衛隊

フライトが決まると、ホワイトボードに搭乗割が表示されます。

ここで誰がどの試験官とどの機体にのって飛ぶかがわかります。

フライト前にはブリーフィングといって、試験官とフライト内容を確認します。

といっても着陸離陸は試験官が行うので、試験内容の確認を軽くしておしまい。

受験生と言っても外部の人間なので、めっちゃ優しく接してくれます。

とりあえず二人で乗るので、どっちが操縦するかを明確にするために操縦するときに「I have control」、操縦を相手に渡すときに「You have control」とコールすることは覚えておきます。

これは航空機の番組を見ていると実際に使っているところをよく見かけるので、そのたびにこの思い出がよみがえります。

パラシュートを装備

自分の順番が回ってきたら移動してパラシュートや救命いかだの装備をします。

このパラシュートがめっちゃでかくて重くて、「これじゃ走れんな~。」と思いながら背負ってました。

パラシュートはメインとサブの二段構えで、いざとなったらパラシュートを開いて、メインがダメなら切り離してサブを開いて・・・って説明を受けたことを思い出します。

でもT-7は軽くて遅いので、いざとなったら不時着したほうが安全みたいなことをボソッと言ってた気がします。

ヘルメットを持つ

搭乗するときにかぶるヘルメットを受け取ります。

トップガンとかで出てくる軍用機用のヘルメットです。

ちょっとテンションあがりましたね~。

そんなことを考えている暇もなく、乗る機体のところまで移動します。

いざ駐機場へ

駐機場に移動すると、たくさんのT-7が待っています。

前の組で飛んだ受験生がふらふらになって帰ってきたり、顔色がえげつないことになっていたりとちょっと引きましたね~。

自分の機体へは試験官についていったら無事につきます。

機体をくるりと一周して異常がないか確認するのは、グッドラックだかハッピーフライトだかでやってた通りで基本みたいですね。

いざ初フライトへ

後部座席に搭乗

駐機場につくと、試験官と整備員さんから挨拶的なものを受けます。

機体に乗るわけですが、飛行機って軽く作るために金属板はぺらっぺららしく、絶対に決まったところ以外は触らない乗らない踏まないように言われました。

まぁ決まったとおりに乗ったら全然大丈夫です。

乗る時は整備員さんがサポートしてくれる

指示通りに機体に乗って、救命いかだを尻の下に敷いて、あとは整備員さんがベルトやらヘルメットやらを準備してくれます。

ヘルメットにはマイクとかがついていて、試験官と会話することができました。

滑走路へ

機体に乗ってエンジンをつけると、前に乗っている450馬力(Wikipedia調べ)のターボフロップエンジンがうなります。

そしてゆっくりと機体がが動き出して滑走路へ向かいます。

もう初めての小型機に心臓はバクバクです。

エンジンがぶっ飛びそう

滑走路に入る直前、一緒に飛び立つ受験生を乗せた期待が並んで、エンジンに負荷をかけるテストをします。

これがエンジンの音と振動がすごくて、「プロペラだけ飛んでいくんちゃうかな。」とか思って心臓バクバクでした。そんなことにはならないんですけどね。

離陸

出典 航空自衛隊

滑走路に入ると、先に入った受験生たちが飛び立ちます。

僕は3番目ぐらいだったかな。ついに滑走路から飛び立ちます。

エンジンがうなり期待が速度を上げ、タイヤの振動がもろに体に伝わります。

機体が小さいので、旅客機の離陸よりもタイヤやエンジンの音を肌で感じられます。

加速して離陸速度に達すると、機体が上を向いて大空へ旅立ちます。

視界がとてもいいので、今までいた教場や滑走路からどんどん上昇していって、街並みが小さくなっていきます。

いままでのどんな景色よりも最高の世界が広がっていきます。

高度1万フィートの世界

出典 航空自衛隊

高度計が1万フィート(約3000m)に到達すると、なんとなく不安になってきます。(笑)

「空気が薄くて息が出来なくなるやん!」と勝手に慌ててました。

そんなことはなくて、帰った後に試験官に聞いたら1万フィートぐらいだったら特別な装備なしで昇れるみたいです。

軍用機の訓練機ですから、視界がすごく良くて見晴らしは最高でした。

車でのドライブやバイクのツーリングなんて比じゃない爽快感と絶景です。

基準線(水平線)が見える

空に上がると水平線が見えてきて、これが自分の姿勢を把握するための基準線と言われるものです。

はっきりと線がみえるわけじゃなくて、なんとなくこれかな~って感じで見えます。

青空と地面の間に雲で一筋の線みたいなのが出来ているので、わからなかったら雲を意識すると基準線が見えてきます。

見えるときに試験をやるので当たり前ですが、一度経験すると視界が悪い中で飛んでいる現役のパイロットの精神的負担は想像を絶します。

ちなみに旅客機の窓からでも基準線は見えます。知識を入れてから乗ったら何となく見えてくるはずです。

試験開始

試験官が試験内容の見本というかデモを行ったら、次は自分の番です。

試験官から「You have control.」の合図を受け、僕が「I have control.」とコールして操縦が僕に切り替わります。

突風で揺れる機体にびくびくしながら、操縦桿を握って決められた試験をおこないます。

登ったり下ったり、旋回したりを4項目ぐらいします。

試験内容について具体的に公開していいかどうか忘れたので、詳しくは書きません。

ただ最近になって飛行機のシミュレーターで遊ぶようになったんですが、大した操縦ではありません。

ただ、初めて乗る身動きが取れない狭い空間で、いままで経験したことがない感覚や体験をして不安を感じながらいこの間教えてもらった手順を慌てずにするというのは極めて難しいです。

そよ風が吹いただけで心拍数は爆上がりして、操縦桿をちょっと違う方向に傾けただけで姿勢が崩れそうになります。

それに三次元の機動なんて初めてですから、思った通りの方向に操縦桿を傾けてもジェットコースターよりも激しいGやマイナスGが身体に襲い掛かります。

その中で平静を保って試験項目を続けられるかというのも、大きなポイントなんじゃないでしょうか。

ジェットコースターより怖い

はい。めっちゃ怖いです。どのジェットコースターよりも怖いです。

これを経験したら、富士急ハイランドなんて目じゃないです。

試験の後に富士急ハイランドに行きましたが、正直楽勝でした。

もともとジェットコースターは苦手だったんですが、この試験の後の数年間はジェットコースターに乗っても何も感じなくなりました。(笑)

だってジェットコースターはレールが見えていて次の自分の機動がわかるじゃないですか。

空だったら次の挙動なんてわからないですし、ジェットコースターならほぼ100%安全が保障されているところを、こっちは万一のためにパラシュート背負って乗ってますから。

飛行機がなぜ飛ぶかも勉強していない段階で飛び立つので、最初のフライトは精神的にすごく不安でした。

たまに吹く風が恐怖

上空に上がると、そよ風でガタガタなるような軽量な機体です。

旅客機の乱気流よりも強い揺れが頻繁にやってくる感じです。

空は快晴でまっすぐ飛んでいても「ガタガタガタガタガタ」っと急にやってきて、いわゆるタマヒュンなことになります。

軽い乱気流でこんなに揺れるなんて知らないですから、最初は恐怖でしかないです。

ただただ自分が操縦桿を握っている間に、そよ風がやってこないことを祈ってました。

基地に戻るけれど

試験項目が終わったらやっと基地に向けて飛びます。

とりあえず終わってほっとしたのもつかの間、降下のためのマイナスGにビビりながら基地に向かって飛んでいきます。

遊覧飛行ではないので、座席から何まで快適とは言えない乗り心地でしたが基地に帰れる安心感が上回ってました。

ところが!滑走路が見えてきてランディングギアを下したとたん、前方に鳥がやってきてバードストライク(鳥とぶつかること)を避けるために急旋回を行うじゃありませんか。

もう「うわぁ・・・もうだめ。」って感じで顔面蒼白でしたよ。

とりあえずバードストライクは避けれましたが、僕の心はハートブレイクでした。

地面に降りた時の安心感は異常

無事に滑走路に進入してタイヤが滑走路をつかむ!タイヤが地面についた感覚が機体を通じて体に伝わってくる!

もう安心感が半端ないですよ。

「やっと帰ってきた~。もう墜ちる心配はないな!」って感じ。

機体が駐機場に戻ってエンジンを切ると、いままで感じていたエンジンの爆音と振動がなくなります。

そしてキャノピーを整備員さんに開けてもらって重いパラシュートを背負いながら狭い機体から脱出!

ついに地面に足をつく!

もう両足を地面につけられた感覚は最高。まさに生き返ったって感じ。

足が地面についているって最高です。

デブリーフィング

ふらふらになりながらも教場に帰ってきます。

試験官とのデブリーフィング(状況終了後の事実確認)を行います。

まずは試験官が試験内容の振り返りと改善点を教えてくれます。

何を言われたっけな~、ぶっちゃけどんな感じだったか忘れました。

その時に受験生の間で話してたのが、言われた改善点を多少でも改善すること乗っててパニックにならないことが大事ってことでした。

実際はどうか知りませんがね。

ただ改善点もそんなに悪い感じじゃなかったと思いますし、最終的に合格しているのでボチボチ良い感じだったのかなと慢心してます。(笑)

このときに質問させてもらい、高度1万フィートぐらいだったらマスク無しでもフライト可能なことを教えてもらいました。

試験はつづく

これが初フライトです。

このあと3回も同じフライトが続きます。

僕の時は1日に2回のフライトを二日にかけて行いました。

ただ2回3回と回数を重ねていくうちに慣れて行って、1回目のフライトみたいな強烈な印象は残らなかったです。

そんな落ち着いて飛べた2回目以降のフライトは次回お届けします。

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